遡ること1995年、ルーカス監督は新しいスターウォーズの草案に取り組みました。
ファントム・メナスというタイトルが世に公表されるかなり前から、ルーカス本人が新しいストーリーを考案していたのです。もしかしたら、ジェダイの帰還のあとのストーリーの構築も視野には入れていたかもしれません。しかし、あえて時代設定を過去にして、ダースベイダーの少年時代にフォーカスを定めます。
ルーカス自身、新しい新三部作の方が初期の旧三部作より映像化したかったと特典映像で語っています。そのワケはコンピュータグラフィックをはじめとする映像技術の進歩です 旧三部作のころはヨーダが人形だったので、歩いたり、跳ねたり
する映像がつくれませんでした。従ってキャラクターの表現に限界がありました。これをストーリー設計の限界といいます。限界により作品全体のシナリオ、クオリティ、展開の制約が生じてしまいます。ルーカス監督はこの点を非常に悔しがっていました。子供向けのSF映画という概念を払拭できたにもかかわらず、興行収入が良かったにも関わらず、です。そしてコンピュータ部門をあのスティーブジョブズ氏に売却、十分な投資をさせて、映画監督から一歩引いて、隠遁生活します。映像技術の進歩を忍耐強く待つために。その間は友人のスティーブンスピルバーグが監督するジュラシックパーク、ライバルのジェームズキャメロンが製作したターミネーターなど少しずつではありましたが映像技術は発展していきます。
そして2000年にCG技術はある程度の完成度になると実証され、エピソード1,2,3の脚本執筆にルーカス監督は本格的に挑みます。ストーリー設計の限界が克服できてもシナリオ、背景の設定が弱ければ、台無しです。せっかく忍耐強く待ったのですから。
旧三部作ではダースベイダー=主人公ルークの父親という、凡人では思いつかないような発想で世間を騒がせました。これをきっかけにルーカス監督はさらなる非凡な発想を期待され、世のプレッシャーにさらされます。そこでダースベイダーの子ども時代を映像化すれば、いくつもの設定、アイデアが生まれ、ストーリー設計の可能性が広がる次世代の映画づくりが可能だと考えました。
すでにダースベイダー=父親だと知っている観客に再びインパクトのある映像体験を体感させるためにです。旧三部作の疑問点をエピソード1,2,3で解明することもルーカス監督の手法です。
アナキンが子どもの頃C-3POを製作したとか、パルパティーンはルークの母と同じ惑星の出身だとか、オビワンも若い頃はジェダイの弟子だった、などです。
ルーカス監督は政治的なテーマも提起します。銀河帝国誕生秘話です。この民主政治から独裁政治の転換過程を説明するために、ルーカスは長年近代史の共和制について研究しました。フランス革命後のナポレオンやワシントン、ナチスのヒトラーなどをモデルに複合、発展させ、脚本を充実させます。ルーカス監督一人でも、難解ながら完成度の高い作品に完成します。
ルーカス監督曰く、旧三部作では一部のマニアしかわからないテーマを一般向けにビジュアルで訴えたかったと言っています。「ガラスショーケースのエピソード」
ちょうどエピソード2の公開時にイラク戦争が開戦、スターウォーズはブッシュ政権に影響されているかと危険視されるほどでした。
結果的に新三部作も商業的に成功しますが、ストーリーの完結をわかりやすく明確化してしまったと揶揄されます。ダースベイダーの一生が6作1作品として完結したからです。
あとは40年間で成熟した作品、会社を誰かに継がせることを考えました。ルーカス自身もう若くありません。ひとりでストーリーを考案することが限界であると認めたのです。
フォースの覚醒公開に向けてディズニーに会社と権利を売却したルーカスは、複数の脚本家による執筆作業に許可を下します。ルーカス監督の愛弟子たちはフォースの覚醒で新たなる希望を再現、最後のジェダイで観客の想像を裏切って映画界を再び席巻しようと画策しているのです。