いやあ、面白かった!角川文庫から出版された政治サスペンスの作品です。もちろんカノン。
買った時は意外と薄いなぁと感じましたが、上下巻とも300ページ近くあり、最近読んだファズマと文章量はあまり変わりません。ページ紙の厚さでしょうね。
読む前はモンモスマが主役でレイアが右腕として活躍するのかとぼんやり予想していました。帝国崩壊後の新共和国の知識が少ないのでイメージが掴みにくかったんです。プリクエルや銀河大戦時の頃よりも、ジェダイの帰還からフォースの覚醒までのカノンについては
勉強不足でした。
新共和国の元老院についてやレジスタンス、ファーストオーダーの誕生の
背景についてです。
そこでこのブラッドラインは最適かつ一番有益な作品です。
モンモスマが議長を務め終えた後、元老院はまた堕落してしまいます。残念ですが、パルパティーンの強権政治が押さえつけ過ぎた代償かもしれませんね。仕方ない。新共和国の国益について高潔な議論をするのではなく、セントリスト党、ポピュリスト党の派閥争いで私腹を肥やす議会の実態が露呈しています。それを変えるなんて容易くできない。
政治って難しいですね。
ポピュリスト党のレイアはセントリスト党のランサムカスタルフォ議員と共に犯罪カルテルの実態を調査していくわけですが、若いカスタルフォはレイアに失礼なことを言ったりして、あまり良好な滑り出しではなかったですが、段々と打ち解けていきます。
レイアは自分の出生について秘密を持っているわけですが、もちろん誰にも言っていません。知っているのはルークとハンソロぐらいです。そのまま死ぬまで封印出来ているつもりでも証拠があったんです。レイアの政敵はレイアを失脚させるためにそれを利用します。レイアの父親はダースヴェイダーだと。それを知ったレイアとカスタルフォの運命は?レイアの政治生命は?
展開が早く、つくりが巧妙な人間関係、あらすじは読んでいてかなり面白いです。これはカノン構築の成果ですよ。誰もが既存の知識としてレイアとルークはヴェイダーの子供って知っている訳ですが、その過程を掘り下げて、銀河の世間は元老院議員レイアオーガナの親を知っているか?
オーガナの物的証拠もオルデラン破壊と共に本当に消えたか?レイアは周りに嘘をついていたことをどう思っていたか?ダースヴェイダー=アナキンだと世間はどう知るか?レイアは兄がルークだとエンドアで知った時の気持ちは?ダースヴェイダーは娘のレイアを尋問してしまった事を後悔しているか?ダースヴェイダーの血筋が残っている事を世間はどう捉えるか?
などの要素を最大限考慮した作品です。
なんとローグワンのデススター計画や小説ファズマのブレンドル・ハックス将軍について仄めかす内容もあります!
レジェンズ作品ではかなり昔の時点でレイアの父が世間で明らかになる内容を作品化していますが、そのカノン構築で”足かせ”な点を再構成されています。
文章が複雑でも読みやすく、さすがベテランの富永氏の翻訳だなぁと感激しました。
そしてあとがきには来年4月にダースプレイガスの出版に向け翻訳中だと記されています!
とても楽しみですね!